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「帰るんだ。大丈夫、君たちの仲間を悪いようにはしない。清算を受けるのは僕たち……俺達過去の者だけだから」
「……メメディ、様―……」
サイトバラッドが不安そうな顔を見せる。そんな彼を背後から支えたのは、灰被だった。サイトバラッドは驚いた顔で、しかしながら唇を強く噛むと目を伏せた。
「信じていますよ。貴方の言葉……」
そんなサイトバラッドの姿を見て、彼の胸中を代弁するように雪做が言った。彼の言葉にメメディは頷くと、外套を翻しエデンへと向かおうとして、足を止めた。
「良いんですか?」
そんな言葉が聞こえてきたから。
「ん?」
言葉を発したのは、ダミアン。メメディが振り向くと、そこには微かな迷いを浮かべた瞳を見せるダミアンがいた。その目はかつての親友にとても良く似ている。
愛する肉親を巻き込むことへの抵抗と、優秀な頭脳が伝えてくる現実との間で揺れ動く感情に。
「【母】を呼ばなくて」
ダミアンの言葉に、メメディは小さく口を動かす。そして悲し気に、笑った。
「そうだね。呼ばなくていいよ」
メメディの脳裏に浮かんだのは、いつも皆の前を行き、切り進んでいくリリスの姿。
誰かに最も依存しているように見える彼女は。誰もいなくとも一人、進んでいける。
「彼女は俺達の中で一番、強いから」
────さようなら、リリス。俺も先に行くよ。
「……それにしても俺。まさかあの狸爺みたいなこと、するとは思わなかったなぁ。ま、あの人みたいにうまくは出来ないけど……許してくれよ? グリム[我が子の友人よ]」
もう二度と踏むことのないであろう失楽園の大地から離れるために。メメディは一人、エデンの入り口を目指す────。
◆◆◆
「でさぁ」
「なに?」
ニーナが続く連戦で凝り固まってしまった肩を回していると、その前に立つ唯臣がギンッ、と睨みつけてきた。
「どーすんだよこの状態! 準備運動してる場合じゃねーだろ!」
唯臣が叫ぶ理由。それは目の前の状態にあった。
契約を済ませたばかりの唯臣にニーナがまずさせたのは、薔薇水晶の壁を作らせることだった。エデンの壁に空いてしまっていた穴をすべて塞ぐように作らせた薔薇水晶のお陰で一時的にだが堕天使達の攻撃を阻めてはいた。が、無論エデンへの攻撃は止むことなく、外側から激しい爆音が響き渡ってきている。
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