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気を張らなくともいい、自分らしいスタンスでいすぎると、気を抜き過ぎてしまった。それほどに普段気を張り、神経をすり減らして居ると言うことなのだが。
────たまには気分を変えて外で、と思ったのだけれど。気を張ってないとだめね……。
ニーナは思いながら膝の上で開いていた本をしめた。革張りの本が、そこまで大きくないぱたん、という音を立てた瞬間だった。
「ぅおわ!?」
声が、聞こえた。
悲鳴に近い、男の声。その声にニーナは、聞き覚えがあった。
……今の声……まさか。
目を細めて声の方を見る。その声が聞こえてきたのは、座るベンチから少し離れた森の中だった。
「…………、レオ? 貴方、何を……」
背後に現れたのは、一人の青年。目立つライオンのような髪型の金髪や、耳や口元、首に手首など至る所で煌めく銀製品とは裏腹に、おどおどとした動きが頼りない。
男としても高めな身長で、座っているニーナからするとかなり上を向かなくてはならない。革のジャケットに【Bring It On!】という挑発的な文字が書かれたTシャツ、腰回りに鎖などをじゃらじゃらとつけたダメージジーンズ等々。
挙げればきりがないほど威圧的な格好をして居るにも関わらず、碧色の瞳は動揺を隠し切れていなかった。
所謂、ヘタレ。外見を強く見せることで気弱な体質をカバーしようとしているこの男だったが、外見とのギャップが逆に彼の気弱さを強調している気がする。
「そ、そ、そんなとこにいたのかよニーナ。その気配消すの、やめろよな!!」
人をお化けみたいに……。
ニーナは、頼りない自らの従者レオ・バグレイにため息を隠せない。
従者であるレオには、ここにいることはちゃんと伝えてあった。
だが、ビビリなレオは外の薄暗い場所で人が動いた気配がしただけで吃驚してしまったのだろう。
「一々怯えすぎなのよ、貴方は。別に気配を消しているつもりなんてないわ……何か用? わざわざここまで来るなんて」
ニーナが呆れ果てながら聞くと、ようやくレオは本来の目的を思い出したようで、あぁ、と言った。
……言って、固まった。
ぶわっと湧き出た冷や汗は尋常ではなく、青ざめた顔も酷く見ていられない。
「ちょっと……さっきから一体、なんなの?」
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