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第一譚 ダイナの迷い
赤い血が、ぽたり、と垂れて
天使の像に黒点を散らす
私は、知らない
愛のある赤の薔薇なんて
薔薇を掴もうと、伸ばす手は
茨の棘に、抉られて
黒い薔薇を造り出す
そのなかにある柩は
扉が硬く閉ざされる
与えられる栄養をも
拒んでいる
私は、いつでも
飢えている
それでも、蝕まれてしまうよりは
いいと思うのよ
いつか
私の心臓の鼓動さえ
憎く思うその日まで
アリスの夢から拒まれたダイナは
ただ、一匹
取り残されるの
私は何もしていないって
いうのにね
私は伸ばされる何かから
手を拒んで
襲い掛かられて──
終焉の見えない一人ぼっちの
【誰も訪れない花一匁】
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