act.Ⅰ

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紅葉が散る。 物寂しい秋が終わり、白が似合う冬がくる。 四季がある日本は嫌いだ。 と言っても、他の国に行った事などない。 ただ冬以外の季節は嫌いだ。 朱色が似合うのはやはり冬だ。 雪の絨毯に染み込む血の色。 物凄く綺麗だ。 現在警察は指名手配犯として“救殺者”なんて仰々しい名前で僕を呼ぶ。 いや、世間中が呼んでいる。 黒いコートに黒い仮面。そして漆黒の刀。 “闇”を象徴しているような出で立ちをしている僕を。 指名手配犯になってしまう理由はない。 いや、確かに血が綺麗だなんて言ってしまう分人間としては終わってはいる気がする。 自覚はある。 “田宮 純”ではなく殺し屋“ウィンター”が本性なのかもはしれない。 だがしかし、依頼を受けて僕は殺しをしている。 自殺したいけど出来ない者限定で。 同意の上の殺しである。 それでも確かに、僕が悪だというのは揺るぎない事実だ。 「“救殺者”。誰がつけたんだろうか。この名前を。救うために殺す者。あながち間違いではない。だが、僕はただの“犯罪者”…。」 いつからだろう? 涙を流さなくなったのは。 いつからだろう? 血の匂いが気にならなくなったのは。 そして、いつからだろう? 『永遠に護ろう。 大好きな君を。』 君のために裏の守護者となったのは。
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