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けれど、目の前の男は苦手である。
悩んだ末、声は掛けないことにした。
それはどうやら正解だったと、有住はすぐに悟った。
「待たせてすまなかったね、」
ビルの地下から出てきたのは、目つきの悪い男よりもっと苦手な男だった。
スカウト事務所のオーナー。
もうニコニコとした笑みは、軽く人を海に沈めてそうな怪しさだから有住は苦手だった。
数度、会っているから軽く会釈をしたものの、次の瞬間有住は、苦手だと思った目つきの悪い男を可哀相だと思った。
囚われた草食動物みたいな、そんな風に見えたから。
今の彼だったら抱いてもいいと思ったが、どうやら顔合わせの相手ではないらしい。
オーナーの相手のようだ。
まだ命はあってほしい。
そうだ、川崎さんをどっろどろに甘やかしてよがらすまでは絶対に。
3階で会った今度の撮影の相手は、正直ちょっと面倒くさそうだと有住は思った。
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