その男の仕事について

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ガラっと開けて、ずんずんと入ってきて。 バシンと叩きつけて。 詳しく言うと、千葉の店の引き戸をガラっと開けて(閉めてはいない)入ってきた南が、客がいるのもお構いナシにズカズカと奥の座敷まで不機嫌を丸出しに進んでいって、バシンと広泰の座るテーブルにDVDらしきものを叩きつけたのだ。 ヤボ用で夕方遅くにマンションに戻った南が部屋で見つけたらしいソレ。 先に来て一杯やっていた広泰と、昨日の嫌な思い出を酒で流そうときていた川崎。 ジョッキを握る手にぎゅうと力が入ったのは川崎のほうだった。 口を結んだまま、目はDVDのパッケージに落としたまま、どこに視線を這わせたらいいかわからずにいた。 肌色とモザイクの多いパッケージはいかがわしいもので、ふくよかな胸と丸みを帯びた体はない。 どちらも筋肉と骨の男と男で、酒の席でこんなものとげんなりするはずだった。 しかし、川崎はメインとなる細身のイケメンの上に覆いかぶさる男にぎょっとした。 隣の男だ。 昨晩、あんなことをしてきた隣の男。 ついにはパッケージにも目を当てられなくなって、男の上のタイトルを凝視した。××に○○を△△△とかいう卑猥極まりないもので逆に当てられない。 それから南と広泰のやりとりに注意を向けた。 まさかと思うがこの男のことを自分に聞いてくるのだろうか。 いや、何も知らないはずだ。 もしかしたらあのストーカー男、ろくでもないことをしでかしたのだろうか。 気が気ではない川崎を他所に。 。
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