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「お前こーいうのが必要なわけか?」
南が夏の暑さも凍りつきそうな氷点下な声で広泰を追及しはじめた。
俺がいるのに必要か?
うん、プライドが高く自分に絶対の自信がある彼なら怒るのは仕方ない。
バレる広泰が悪い。
彼らを知る客総てがそう思ったに違いない。
昔ならここでひと蹴りってのがあったのだが、
「ああ、これね。親父っすよ、親父」
広泰は極冷静に返す。
落ち着きっぷりというか南の扱いというか、すっかり広泰は大人になったのである。
親父こと会社の社長。
南の義父でもある。
「はあ?なんで?親父さん普通に奥さん好きじゃねぇかよ」
「何かマンネリ化してると南ちゃんに逃げられるから勉強しとけってよ‥」
自分の親としてほんっと恥ずかしい。
「榊さんにも渡してたし‥何考えてんだか、」
はぁとため息をつく広泰の隣で意外や意外、南はほんの少し頬を赤らめている。
そんな珍しい表情を見逃すところが広泰のまだ子供なところ。
‥親に認められて感慨深いてとこか?
見逃さないカウンターの中の男はやはりホントの大人であるが、さすがに川崎の安堵した表情までは見抜けなかったらしい。
不特定多数の前で裸でセックスをさらけ出してる男だ。やっぱりロクな男じゃないことは間違いないのだと、川崎は昨晩のことなど隣人にとってはおはようくらいなものなのだと、改めて腹がたった。
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