現れた男

3/6

736人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
オレはあんたのことをそういう風に見てたんじゃない。 だから、キスしたいだとか、そんなこと・・・。 「って!!!!!何でお前がっ!!!!!」 薄ら上げた瞼、川崎の視界に現れたのは隣人の有住だった。 何をしようとしていたかは、多分川崎の予想した通りのことだろう。 やたらと距離が近い。川崎はぐいぐいと有住の胸元を押し退ける。 視界に入る部屋の模様はどうやら自分のものではないらしい。 「何って、川崎さん酷い。」 「酷いって何だ、つかどこなんだここは、」 「…覚えてないか、」 有住はまあ、仕方ないといった表情だ。 「あんた、ココの下、エレベーターの前で寝ちゃってたんっすから」 「はぁ…!?」 はぁ、とは言ったものの、川崎の勢いはどんどんと失われていく。 確か。千葉の店をでてタクシーを捕まえた。 行き先を告げ、それからの記憶は無い。つまりそういうことだろう。 タクシーから降り、エレベーターの前まで来たところで力尽きた。 「ほっぺた叩いても起きないし、カギ探しても持ってないし、外に置いてけないからオレんちに連れてきただけですよ、」 むしろ感謝してほしいな。水、飲みます? そう言って立ち上がる有住に川崎はイライラした。きっと理由はコイツに失態を見せたところだろう。 別に何故自分が泥酔してマンションの下で寝てたかなんて、有住の知るところではないだろう。 ただ、いつも自分に言い寄ってくるゲイビデオのAV男優と同じだと見透かされた気がしたのだ。後ろめたい気持ちがそうさせたに違いないのだが。 ・
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

736人が本棚に入れています
本棚に追加