736人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
オレはあんたのことをそういう風に見てたんじゃない。
だから、キスしたいだとか、そんなこと・・・。
「って!!!!!何でお前がっ!!!!!」
薄ら上げた瞼、川崎の視界に現れたのは隣人の有住だった。
何をしようとしていたかは、多分川崎の予想した通りのことだろう。
やたらと距離が近い。川崎はぐいぐいと有住の胸元を押し退ける。
視界に入る部屋の模様はどうやら自分のものではないらしい。
「何って、川崎さん酷い。」
「酷いって何だ、つかどこなんだここは、」
「…覚えてないか、」
有住はまあ、仕方ないといった表情だ。
「あんた、ココの下、エレベーターの前で寝ちゃってたんっすから」
「はぁ…!?」
はぁ、とは言ったものの、川崎の勢いはどんどんと失われていく。
確か。千葉の店をでてタクシーを捕まえた。
行き先を告げ、それからの記憶は無い。つまりそういうことだろう。
タクシーから降り、エレベーターの前まで来たところで力尽きた。
「ほっぺた叩いても起きないし、カギ探しても持ってないし、外に置いてけないからオレんちに連れてきただけですよ、」
むしろ感謝してほしいな。水、飲みます?
そう言って立ち上がる有住に川崎はイライラした。きっと理由はコイツに失態を見せたところだろう。
別に何故自分が泥酔してマンションの下で寝てたかなんて、有住の知るところではないだろう。
ただ、いつも自分に言い寄ってくるゲイビデオのAV男優と同じだと見透かされた気がしたのだ。後ろめたい気持ちがそうさせたに違いないのだが。
・
最初のコメントを投稿しよう!