現れた男

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入り込んできた生暖かいモノに吐き気がした。 容赦なくそれを噛めば、小さく呻いた声が聞こえた。 「っ、あんた、ほんっと、素直じゃねぇな、」 額を掴まれ、壁に後頭部を打つように押さえ付けられた。 有住は怒っているに違いない。 自分だって怒っている。 お前が余計なことを言うから。 そう思って川崎は有住を見たが、彼は存外優しい瞳をしていた。 そして、性懲りもなくキスをしてきた。 下唇を軽く食まれ、舌先でなぞられた。 背筋がぞくりとした。 巧いのは当たり前だ。そういう職業なのだから。 力が抜けた川崎の隙に、有住は腰元へと手を伸ばす。 「っあ、」 柔らかく反応した自分に川崎は驚き思わず声を上げる。 「まあね、襲おうってつもりが無かったわけじゃないから、あんたの言ったことは正しいね、」 「おまっ、ず、ずるいっ、」 「黙って。安田さんだと思っていいから、眼ぇ閉じてて」 言われて川崎の頭に血が上る。カっとして目の前の男を殴りたい衝動にかられる。 しかし、そうできないのは酔っ払っていて、力が入らないのと、急所を触られているのと…。 ほんの僅か、僅かに安田の顔が浮かんでしまったからだった。 ・
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