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「返して!もうっ…お願いだからっ…」
必死でバッグを掴んでも、強い力で奪いとられ、あたしの腕を引っ張る浩太。
「うるっせぇな!
いいから来いって言ってんだよ!」
「やだぁっ!もう…っっ、やだぁ!」
周りから注がれる視線。
でもこの程度なら痴話喧嘩にしか思われてないだろう。
男の力に適うはずなんてなくて、あたしはズルズルと引っ張られる。
引っ張られれば、自然に足は前に出てしまう。
「浩太っ…!
離して!お願いだから!」
こんなぐちゃぐちゃなやり取りをしながら、駅前の大通りを抜けてCECILがあるビルが近づく。
「……っつ、もぉっ…やだっ
もう嫌なのっ…」
泣きながら訴えても、浩太は全く腕の力を弱めることもなく歩き続ける。
あたしは掴まれている腕を何とか振りほどき、またしゃがみこんだ。
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