1.新月

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 「・・・。三十分も待たされて、迎えに行こうと思って外に出たら星弥君がいて、やっと来たかと思ったら帰ろうとするなんて、ひどいよ。」 まったく美鈴さんの言うとおりだ。心配して誘ってくれた先輩を待たせた挙句、連絡の一ついれず帰ろうとするなんて最低だ。  「だからふられるんだよ。」 不意にそんなことが口から漏れてしまった。  「まぁ、明日香とのことで色々辛いだろうから今回だけは許したげる。」 まただ。気付いてる。でもそれを明かす勇気が俺にはない。  「すいません。」  「謝らないの。」 美鈴さんは子供を叱るように俺に注意した。  「さ、お店に入ろう。お腹すいたでしょ?」 美鈴さんに明日香先輩にふられた詳細を話した。美鈴さんは優しく接してくれた。割れものを扱うかのようにそっと。また甘えているのだと自覚しながらも。自分が最低な人間であると理解しつつも、利用してしまった。
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