1.新月

5/5
前へ
/5ページ
次へ
 「高校の時からずっと好きでした。この大学にしたのも正直先輩と離れたくなかったからです。」 涙が止まらなかった。止め処もなく流れてくる涙を拭いもせず言った。美鈴さんはしょうもない俺の話をずっと真剣に聞いてくれた。きっと心を痛めながら。  「明日香とは明日話していろいろ聞いてみる。別に星弥君が嫌いでふった訳ではないだろうし、ちゃんと理由もあると思うの。だからそんなに落ち込まないで。」 たとえどんな理由があろうともふられた事実なんて変わらない。喉まで出かかった言葉を俺は呑み込んだ。自分が傷ついてるからって、親切にしてくれている先輩に文句を言うなんて事をしてはいけないことぐらいは分かっていたから。  「女の子は別に明日香だけじゃないし、大学に入ったばっかなんだから、まだまだ色んな出会いがきっとあるから、一度ふられたくらいでへこたれんな。」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加