転校生

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あれから数日経ち菜実はナイトクラスとして初めて登校することになった。 “この門の向こうは今まで私がいた世界で、今は別世界。嫌だなぁ…伸居るのかな” キィ 門が開いた。 いつもと同じ黄色い声が響く。 「ねぇあれ峰堂さんじゃない?」 「理事長の娘だからってずるい」 などと言う声が其処ら中から聞こえてくる。 「ねぇ峰堂さん?」 横から女子達が菜実に声を掛けてきた。 「ねぇ聞いてるの」 そう言って一人の女子が菜実の腕を引っ張った。 「えっ…」 だが、空夜がそんな菜実を支えて女子達に向き合った。 「やめて貰えるかな?この子は理事長の娘でもないだよね」 「え?」 空夜の瞳を見る女子達の顔は火照っていた。 「この子は僕の妹の桐生菜実だよ」 「桐生?」 「だからほっといてあげてね」 「はい…貴方は?」 「えっ!?僕?桐生空夜だよ。よろしくね」 そう言って菜実の腕を引っ張り早々と歩いて行く。 そんな中一人の少女の姿が菜実の眼には映った。 「菜実…」 「実代ちゃ…ん…」 菜実はすぐさま目を逸らそうとした、がそんなこと出来る筈もなかった。 何故なら実代の横には伸がこっちを向いて立っていたからだ。 近づいてくる伸の姿に菜実の心臓は波打つ。 「菜実、久しぶりだな。」「うん…」 「元気でよかったよ」 「あっ…伸…」 「菜実」 邪魔をするように空夜が菜実の名を呼んだ。 「じゃあな」 伸は菜実に笑いかけると去って行こうとした。 だが、去って行き際に伸はこう言い残した。 「今晩12時に此処で待ってる。必ず来い」 伸は空夜に聞こえないように菜実にだけ伝えた。
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