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「我が国は、辛く苦しい時を経てまさに天祐を掴み取った」
男の声が響く、薄暗い室内。
そこは、手術室の様だった。
大きな紺のベッドの上には、全裸の男性。四肢の至るところにはの血管には、チューブが差し込まれ、鮮緑の薬液が絶え間なく流し込まれる。
鈍く光るモニターには、男の心拍や脈拍のデータが機器を通じて映し出されている。
「先の戦争による傷痕を、他国の血潮で癒すのは皮肉な話かもしれない……しかし、我々はその恥を敢えて受け入れる事で、漸く諸国と同じテーブルに立つ事が出来たのだ」
演説は、ベッドとは離れた大画面の液晶から流れている様だった。
スーツを纏った男が、議事堂の中心で拳を振りかざしながら、熱弁を奮っている様子が映し出されている。
男の名前は、大沼義一郎。 先の選挙を経て、一国の総理大臣となった男だった。
多くの議員が固唾を飲んで見守る、その就任演説の様子の生中継の映像が映し出されていたのだ。
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