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「我が国を、最強の国家にする事を個々に宣言する」
大沼の、この発言を合図としたかの様に――飛蝗人間は、覚醒した。
腕の一薙ぎでチューブを引き剥がした彼は、軽々と跳躍しベッドから離れると、四つん這いの姿勢で着地する。
「ここは……」
赤い目玉の、複眼の一つ一つに部屋の場景が映し出される。
突然、彼は耳を抑えて悶絶する。
「――今の発言を撤回するつもりはありません。私が目指す理想の国家とは――」
毅然とした大沼の発言、周囲の怒号とも付かぬ野次の声が、鋭い矢となり飛蝗人間の聴覚を刺激する。
「あぁ…頭が……、頭が、痛い」
聴覚を刺す様な痛みに苦しみながらも、飛蝗人間は考える。
自分を取り巻く状況を、見知らぬ部屋、明らかに異変を遂げた自分の体。しかし、それに対する答えがあるはずもなく、飛蝗人間は苦しみ続ける。
やがて、モニターの電源が落とされたのか、周囲はまた静寂へと還っていった。
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