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「目は覚めたかね、北郷威くん」
飛蝗人間が、声の方へ視線を移す。
モニターの電源を切ったとおぼしき人物は、血にまみれた白衣に身を包んだ初老の男であった。
ゆらり、と立ち上がった飛蝗人間に、向かい靴音を鳴らしながら近づいてくる。
飛蝗人間――北郷威は、無言で白衣の男の首根を掴み上げると、軽々と持ち上げたその体を壁へと叩き付ける。
「貴様……、どういう事だ。俺の体も、この状況も」
自分の身に起きた、この意味不明な状況への怒りに首根を圧迫する力は徐々に増して行く。
ぎりぎりと、呼吸器が潰されていく男の頭は赤く熟れ、掠れた喉から奇妙な空気音が漏れでる。咳き込むと同時に吐き出された血の飛沫が、飛蝗の腕へと跳び跳ねた。
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