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「……あきな……今度ゆっくり、ウチに連れておいで」 「……」 「おれに遠慮してるんだったら、……その心配はしなくていいから」 机に片手で頬杖をつき、こちらを向く優しくふわりと細められる瞳に、……やっぱりこの人は、俺の父親だったんだと改めて思い知らされる。 「たまには会いたい、って言ってたって……伝えて」 「……ああ」 微かな嫉妬を抱いてしまうものの、母さんとの逢瀬を心待ちにしている親父のその表情を見れば、純粋に俺の恋人としての彼女に会いたいと言っているんだということは伝わってくる。 「彼女さえ嫌じゃなかったら、いつでも遊びに連れて来ていいから」 俺がこの人にどれだけの愛情を注がれているか……嫌って言う程、思い知らされる。 「……うん」 そして、……与えられた愛情の分だけ、俺はこの人に何か少しでも返せているんだろうかと、常日頃抱えているものが、……また今日も少し膨らみを増すんだ。 そんな俺を気遣い、今日は帰らないかもしれないという親父は今夜、 外泊なんて出来るわけがない母さんとの逢瀬のあと、……どこで夜を明かすのだろうか…… .
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