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「できれば、戻ってきたいとは思ってるけどね。  でも残念ながら、それは自分では決められないんだ。  まあそれ以前に、教員採用試験に受からないことには、先生どころの話じゃなくなるんだけど」 那流の質問に答えながら、“試験”という言葉の重さに苦笑いを添えると、 「もー、本田先生ー」と、むくれた声で浅井がすぐ後ろに迫ってきた。 「じゃあ、……試験、頑張ってください」 「え……」 ちらりと俺の後方を見やった那流は、捲し立てるようにそう言うと、再びくるりと踵を返す。 「……さようなら……っ」 「あ……」 ふわりと長い髪が靡いたかと思うと、あっという間に、その姿は目の前から消え去ってしまった。 「あー、本田先生ー、また女の子泣かせてるんでしょー」 「……違うよ……。そんなんじゃないって……」 冷やかしめいた声を横に受けながら、ふわふわの長い髪の揺れる後ろ姿が無くなったその場を見据えたまま、立ち尽くす。 これで本当に最後なんだと思うのに、なぜか不思議と淋しさを感じなかった。 愛らしいあの声がくれた労いの言葉に、 ……いつかそう遠くない日、“おかげさまで”と返せるような気がしたからだった。 .
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