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堂々と時間の確認なんて、主役の立場としてはいただけないのは承知だ。 けれど、早くこの宴会を切り上げていただきたいと、俺の中の温厚さが酒に潰されていた。 辛うじてテーブルの下に合わせた焦点で、22時34分を確認。 深く呼吸をして、頭を支えた掌の陰から……宴会場の対角線上に視線を走らせた。 一瞬捉えた艶のある長い黒髪。 うつ向いたまま、その表情が見えない。 心の中で千切れるほどの舌打ちをする。 俺の必死の視線を遮るように、目の前を琥珀に波打つグラスが横切った。 「弱かったんだ、お酒」 こと、と肘を伝わって、グラスがそこに置かれたことがわかる。 グラスの通ってきた軌跡を辿るように視線を横に流すと、一人分空いた席の向こう側で、瑞本が同じ色のグラスを傾けていた。 「烏龍茶。  店員から直接受け取ったから、誰も口はつけてないよ」 どうやら気遣ってくれているらしい瑞本と視線を交えずに、遠慮なく「ありがとう」と目下のグラスに手を伸ばした。
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