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瑞本の饒舌は普段通りと言えば普段通りなんだけど、先の一件からほとんど会話という会話はしてこなかったのに、
それでも機嫌良く口を回しているのは、やはり酒の入った無礼講の席だからか。
「それだけ自分が本気なんだって思い知らされるよ」
もう一口、烏龍茶を流し込む。
上座に位置付けられたこの席を宛がわれたのは、自然なことだった。
幹事である森永先生が、下座で注文を取り付けるのも何も不自然なことではない。
まだ若手の彼女が、下手に下がるのも、まあ当然と言えば当然の配置だ。
だけど、そうやってその艶やかな髪に触れるのは、何なんだ?
そしてその下ろした手は、今どこに回してる?
うつむく彼女を覗き込む森永先生の右手の行方に、グラスを掴む指が白むほどに力がこもる。
「あたしの話、聞いてる?」
「悪い、今それどころじゃない」
「あ、……あー、あれ気づいてたんだ。
お持ち帰りの典型パターンだな」
俺の目線の先を辿る瑞本が、気配でわかった。
誰が見ても、やっぱりそうか。
……ふざけるな。
お持ち帰りするのは、俺だ……
いや違うだろ、馬鹿。
そうじゃない。
……いかん。
頭が欲望のままに本音を生み出している。
「物騒な目してるんだけど、大丈夫?
そんな人殺しそうな目するなら、さっさとお姫様救ってきたらよかったのに」
「……酒に飲まれたまんま行ったら、俺そのまま理性効かなくなる。
胸ぐら掴んで表に引っ張り出して、顔わからなくなるまで殴り付けそうだったから。
……一回冷静になりにきた」
「ひえー、大人しいふりして、本性はこわいのねーサトルクンてば」
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