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「すまないな」
そう謝るビルノに、アイシャは目を丸くした。
「帝国ギルド幹部が素直に謝るなんて」
そう言うアイシャにビルノは苦笑した。
「やはり他国からはそう思われているか。俺だって、今の帝国ギルドのあり方はおかしいと思うさ」
ビルノは言う。
「最近までは何とも思っていなかった。ギルドは正しいと思っていた。けどよ、色んな価値観持っている奴と接しているうちに、自分の行いが馬鹿らしくなってよ」
「だから身を退きたいけど国民からの支持が強すぎて退けない。そんな感じね」
アイシャがビルノの今の立場を明確に言い当て、ビルノも素直に肯定する。
「ビンゴ。それにあいつらには恩もあるし、あいつらの行き過ぎを止めるのも俺の役目だ」
アイシャはビルノの雷光の正拳としての評価を改める。
こいつは帝国ギルドの人間の考えではないまともな奴だと。
だが、それは帝国ギルドから見れば異質だ。
近いうちに板挟みに合うに違いない。
世の中真面目が馬鹿をみるとはこの事だ。
「…………あんた、早死にするタイプね」
「世間的にな」
そのとき、遠くからエンジン音が聞こえてきた。
攻撃隊が帰ってきたのだ。
「さてと、お出迎えに行こうか。あんたも来なよ」
アイシャに誘われ、ビルノはこの作戦の立役者を出迎えるのは道理だとそれに習う。
胸の内に溜め込んでいた事を吐き出した後の心は軽かった。
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