6人が本棚に入れています
本棚に追加
「シンク!シンク-----ッ!!!!」
「だぁああああ!? うるさぃ! どうしたのさ、カル。」
呆れたように目を向けたシンクの先に、カルと呼ばれたそばかすがよく似合う少女が笑う。二人しかいない畑で嬉しそうに笑い、満足したのかシンクに抱き着いてくすくすとまた笑った。
対するシンクは仕方ない奴だ。 と、一緒に笑いあい和気藹々とした和む日常に満喫する。
「で? どうしたの?」
疑問に対してカルは、何のこと? と言わんばかりの顔を向けるがすぐに思い出したように慌てふためいた。
「おばさまがお昼だって!」
「わかった、ちょっと待ってって。これだけ刈っちゃおう。
『我は請う 摂理を曲げて
一刃の風よ 駆け抜けよ』」
二小節を言葉にして右手を振うシンク。
先ほどまで無風であった畑に風が起こる。耳障りな風切り音とともに今まで鎌で刈り取っていた麦が雪崩れ込むように穂が揺れ落ちた。その様子を眺めたシンクは一息つき、振り返る。
魔法を放ったシンクに見惚れていたカルは見る見るうちに顔が朱くなる。
「し……シンクも魔法上手くなったよねっ。」
最初のコメントを投稿しよう!