Prologue

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 少女は少年を肩にかけると街へと向かって歩き始める。         ◇  神無(かんな)の街は西側の海岸から近い場所にある。この島の広さは数百キロもあり、幾つかの村や街があるがその中でも比較的に神無は大きいほうだ。  外界から遮断されているとはいえ、生活は本土となんら変わりない。情報や物資は島の北側にある港町に政府──島の所在を知る一部の政府機関が船でやってくる。  それ以外の招かれざる訪問者は数年に一度あるかないかくらいだが、それもだいたいは遺体の形で流れ着くものが多い。  そういった状況の中、島で起こる事件や情報が広まってしまうのもまた事実。そういう中で謎の少年の事は島全体に広がるのも当然であった。  当の彼は病院へと運ばれ手当てされた状態でベッドの上に横たわっていた。ベッドを囲むように周りには彼を助けて連れてきた少女と数人の大人達がいる。  その中で髭をはやし杖をついている白髪の老人が、横たわる少年に話しかける。 「少年よ、君の名前は?」
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