プロローグ

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 石畳の道を、僕たちY中学校廃墟同好会は足元に注意しながら歩いていた。目的は、この石畳の道の先にある、《紫陽花館》と呼ばれる豪邸だった洋館の、廃墟だ。今年卒業すると、僕たちは離ればなれになってしまう。その前に、最後の「探検」として、今まで行きたかった《紫陽花館》に行こう。そう提案したのは、この同好会の会長である羽鳥だった。それからあれよこれよと話しは進み、こうして今日、《紫陽花館》に向かうことが決定したのである。  しかし、梅雨どきとあって、空模様は怪しかった。家を出るときにはまだ持ちこたえていたが、バスに揺られるうちに、ついに雨が降り始めてしまった。延期にしようか、という案もあったが、これから高校受験を迎える僕たちにあまり時間は残されていなかったのと、雨も小降りだったから、こうして実行することになったーーのだが。歩き始めて15分が経過した今、少々後悔し始めていた。 「うわ!」  僕は危うくバランスを崩してしまった。もう少しで転んでしまうところを、亜紀に助けられた。 「気をつけてよ、もう。すべりやすくなってるんだから」  そう。《紫陽花館》に続く唯一の道であるこの石畳の道が、コケと雨でとてもすべりやすくなっていたのだ。人がいたときは整備されていたらしいが、ここの主人が5年前に死んで以降空き家となった。まだその主人が生存していた頃は専用の庭師が手入れをしていたらしいが、その主人が「謎の死」(実はただの老化による寿命だったらしいが、この手の洋館には妙な「噂」が付き物で、実は殺人事件でその庭師が犯人だの、主人が一家を皆殺しにした後に自殺しただのという噂が僕たちの間ではやっていた)を遂げ、庭師もその後行方をくらまし(これも噂。実は、ただ転職しただけ)、《紫陽花館》も売り家となったために、手入れはされず、こうしてコケに覆われてしまったのだ。 「あ、ありがとう……」  僕はそうお礼を言って、バランスを戻した。そして、再び歩き始める。
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