号外(prologue)『世界は破滅を待っている』

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 幾億年の歳月が流れようと、決して変わらぬものがある。  そう、バーミリオンに染まり行く、地平線のあの巨大な雄々しき姿。  悠久の宇宙空間の中を漂うフレア。その熱と輝きは、遠く離れたこの惑星に、命の輝きをもたらしてくれる。  光のエッジが大きくなればなるほど、その一方ではそれと同等の……  否、本体すら包み込まんばかりの影が生まれていく。 【キャッスル・ガーゲス】  その禍々しい名を、21世紀の現在も知る者は少ない。  いや、むしろ人々はその名を敢えて忘れようとしていたのかも知れない。  モンゴル帝国によるヨーロッパ征服。  ナポレオン・ボナパルトのアルプス越え。  鳥羽・伏見の戦い。  幕末日本の激動。  第2次大戦下の全世界焦土化。  人間たちが争い、血を流す度に、【キャッスル・ガーゲス】は暗躍した。  幾十年、幾百年、幾千年……  邪なエネルギーを動力とする【キャッスル・ガーゲス】に魅入られし者達は、時にはその魔力に脅え、また別の者は恍惚としながら、魂を売り渡し、富と権力と他者の命を手中に治め続けてきたのだ。  そして、それは21世紀の現在においても繰り返される。
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