記憶を無くした男

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夢の中の俺はなかなかに酷い男でね。 幼なじみがいたんだが、ソイツをまるで奴隷のように好きにこきつかってた。 まるでマンガみたいな関係さ。 俺の親が大会社の社長で、彼の親はその子会社の平社員。 彼は俺に絶対服従するしかなかった。 親にも俺のご機嫌を取れと言われていたんだろう。 俺がどんなワガママや無茶を言っても、彼はけして無理だとは言わなかった。 何でもやろうとするんだ。 そう、例えば俺が「そこの木に登れ」と言うだろう? その木は背こそ高いが見るからに細い枝ばかりをあちこちに伸ばしていて、普通に考えればいくらも登らない内に枝が折れて落ちてしまうだろうことが分かる。 落ちれば骨の一本も折れてしまうだろう ことも想像に容易い。 それでもね、彼は登るんだ。 そして、予想通り落ちてケガをする。 俺は大笑いしたね、「バカだなぁお前は。こうなるって分かってて何でこんなことするんだか」って。 やれと言ったのは俺なのに酷いって? そうだな、全くその通りだ。 その頃は子どもだったからな。 残酷なことも平気でできたのさ。 そういうものだろう?子どもってのは。 彼がバカみたいに俺の言うことを受け入れてしまうのがただ面白かったんだ。 どんな理不尽な要求をしても、表情一つ変えずにためらいなく実行してしまう彼は、俺にとって何よりも楽しい玩具だったんだよ。
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