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「おはようノラネコくん、記憶はどうだい?」
「…」
この人を見るのは初めてだ、どうやら彼が村長さんという村一番のお偉いさんとやららしい、ガラスの向こうで受話器を手にする青年は、まだ若い顔付き、きっと自分と同年代くらいだろう
女のように長い髪、そのピンクの頭には兎の耳、少しぼろい赤いジャージ、そして足が悪いのであろう車椅子に乗っていた。
「…だいぶ思い出した、ただ事故った時と大体の人生くらいしか思い出せてねえ、自分の名前とかどんな奴だったまでは…ちょっとな」
「なら、自分が何を仕事に生きていたかはわかるんだね?」
「……ああ、主に悪行ばっかりだ、今回は人身売買が目的だった気がする」
嘘をつく気は無かった、これは今になるからこそ俺が罰されるべきことだ、死ぬことができないなら別の償い方を決めてもらった方がいい、でなければ晴れる気がしないのだから。
「…どうやら随分と性格が変わったようだね、よかったじゃないか」
「何がだ」
「良い子でよかったということだよノラネコくん、…そうだね、今すぐは無理があるけれどいつか牢獄を出してあげるよ」
「…はあ」
「そしてその時に、約束を幾つかしようか、うん」
「…」
どういうことだろうか、余計に混乱するだけの面会だった。
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