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「しかし、こいつはいかんな」
右手に査定表、左手で割れたあごをさすりながら親父が論評する。
「ルーティーンは意識すれば何とかなるにせよ、必殺技がないのはやはりネックだ。私の息子ならば、『バーニングマン』の得意技である『バーニング・クライマックス』ぐらい使えても良さそうなものだが……」
「しょうがないじゃん、僕は落ちこぼれなんだから」
全身タイツ族の名折れ。
親族一同の集まる席で、何度となくそう呼ばれた僕だ。
「それは違うぞ、英雄!」
親父は勢いよく、僕に人差し指を突きつけた。
ちなみに僕の名は緋色英雄(ひいろ ひでお)という。
……身も蓋もオチもあったもんじゃない。
そんな僕の感傷をよそに、親父の熱弁は続く。
「英雄、お前には過去より連綿と続くスーパーヒーローの血が流れている!正義の熱き思いに目覚めればもっと強くなれる。必殺技だって使えるようになるはずだ」
親父の目にはうっすらと涙が。
ゴメン、泣くとこどこにあった?
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