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「はぁぁぁぁ、うぜえぇぇぇぇー」
全身で嘆息して、僕は自室のベッドに倒れ込んだ。
親父が引退した今、地域の平和は『ゴールデンボーイ』の双肩にかかっている。
それは判っている。だけど……。
「ウチに帰るまでは気分良かったのになぁ」
カメレオンバグの一件から2日。
学校生活がようやく落ち着きを取り戻したこの日の放課後、僕は三田さんにプレゼントを渡した。
小遣い3ヶ月分をつぎ込んだ、クロムハーツのネックレス。
うつむいて真っ赤になった三田さんは、週末のデートにそれを着けて来ると約束してくれた。
そして、ケン坊。
向かいに住むケン坊は、半ズボンが似合う元気いっぱいの五歳児だ。
『ゴールデンボーイ』の大ファンで、今日も帰宅途中の僕を見つけるなり「ヒデ兄ちゃーん!」と寄って来て、自作の絵を披露してくれた。
どこだかの遺跡ににある壁画レベルのクォリティー。けれど一生懸命さが伝わるその絵には、怪物を倒す『ゴールデンボーイ』の姿がでかでかと描かれていた。
僕らヒーローのカツヤクは、朝昼晩のニュースや特番で頻繁に取り上げられている。
政府の宣伝戦略が功を奏しているようでなによりだ。
目を輝かせて、いかに『ゴールデンボーイ』がカッコいいかを熱く語るケン坊。
嬉しいけれど、もっと見る目を養った方が将来のためだろう。
ーー僕の守る街。
『星降り(スターフォール)』後も皆変わらず、お互いを気遣い、平穏に暮らしている。
その平和を壊してはならない。
判ってはいるのだ。
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