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「さすがに今のシーンは使えないわね。あんなのニュースで流したら、田舎のジジババショックで大量死だわ」
のんきに論評しつつ、夕妃がーー今は変身しているがーー現れた。
変身後の彼女、『ラプンツェル』はメタリックシルバーのゴーグルに同色のジャケットとミニスカート、ブラックのチューブトップにスパッツというクールなコスチュームに身を包んでいる。
『モジモジ君』にしか見えないこっちとは大違いだ。
サイコキネシスによって宙に浮いた彼女は、僕の表情を見てたしなめるように言った。
「切り替えなさい、ゴールデンボーイ。出来なかったことを悔やむより、この先何ができるかーーよ」
「ーー判ってるさ。これでもヒーロー歴十七年なんだぜ?」
僕らの体は強靭だけれど、精神はそこまでじゃない。すべてを背負って登るには、高すぎる山だってあるのだ。
「ところで手伝ってくれないか?こいつには打撃が効かないんだ」
「ESPもよ。生体ジャマーを備えているみたいね」
「うわ、めんどくせー」
正直こいつの攻撃力は大したことない。捕獲は可能だろう。
けれど、倒せなくては市民の信頼が得られない。
査定表を前に頭を抱える母さんの顔が浮かんだ。
「とにかく押さえてはおけるんだ。その間になんとか……」
対策を練ろう、と言いかけて、僕は『それ』に気付いた。
ぶよぶよのスライムバグ、その体に生えた無数の突起物。
そのうちの一つに、見覚えのある銀色の鎖が引っかかって風に揺れていた。
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