PART 3

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それはパクパクと『口』動かした。 声は出ない。けれどその唇の動きはーー タスケテ…… と読めた。 「騙されないで、ゴールデンボーイ!」 ラプンツェルが叱咤する。 「三田宏江はもういない。あれは擬態よ!」 「判ってる!」 僕は返した。 判っているんだ。でも……。 力の入らない僕を、スライムバグは引き寄せ始めた。 その一部にぽっかりと穴が開く。自慢の消化液の餌食にするつもりなのだ。 「ゴールデンボーイ!ーーひぃくん!」 変身中はヒーローネームで呼ぶ。その不文律を破ってラプンツェルは叫んだ。 「見て、あなたの後ろを。あなたの街、そこに住む人たち。そいつのエサにするつもり!?」 だから、判ってるってば!!
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