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湧き上がる悲鳴。僕のでも、ラプンツェルのでもない。
スライムバグが気持ち悪い声をあげつつ後退した。
僕を拘束していた触手はその先端分が消失し、煙を噴いている。
僕の身体から発する高熱が、それを焼き切ったのだ。
「正義の熱い思いに目覚めれば……だっけ?」
高熱を発し、それを操る。『バーニングマン』譲りの能力が、僕の中で覚醒の時を迎えていた。
こんな時に。
神様のSっぷりには呆れるばかりだ。
「悲しいけど僕、ヒーローなのよね」
誰にともなく呟くと、カメラ写りを意識しつつ、僕はたんかを切った。
「覚悟しろ、スライムバグ!」
熱を右手に集中させると、それは金色のコロナとなった。
逃げられないと悟ったのか、バグは攻撃に転じてきた。
突起物をすべて触手に変え、それをムチャクチャに振りながら僕に迫る。
否、一つだけ、三田さんの顔はまだ健在だ。
相変わらず「タスケテ……」と声を出さずに言うそれにならって、僕も唇だけを動かしてお別れを告げる。
さよなら、三田さん……
「ゴールデン・クライマックス!!!」
……灼熱の拳が炸裂し、スライムバグは一瞬で蒸発した。
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