PART 3

9/9
前へ
/31ページ
次へ
湧き上がる悲鳴。僕のでも、ラプンツェルのでもない。 スライムバグが気持ち悪い声をあげつつ後退した。 僕を拘束していた触手はその先端分が消失し、煙を噴いている。 僕の身体から発する高熱が、それを焼き切ったのだ。 「正義の熱い思いに目覚めれば……だっけ?」 高熱を発し、それを操る。『バーニングマン』譲りの能力が、僕の中で覚醒の時を迎えていた。 こんな時に。 神様のSっぷりには呆れるばかりだ。 「悲しいけど僕、ヒーローなのよね」 誰にともなく呟くと、カメラ写りを意識しつつ、僕はたんかを切った。 「覚悟しろ、スライムバグ!」 熱を右手に集中させると、それは金色のコロナとなった。 逃げられないと悟ったのか、バグは攻撃に転じてきた。 突起物をすべて触手に変え、それをムチャクチャに振りながら僕に迫る。 否、一つだけ、三田さんの顔はまだ健在だ。 相変わらず「タスケテ……」と声を出さずに言うそれにならって、僕も唇だけを動かしてお別れを告げる。 さよなら、三田さん…… 「ゴールデン・クライマックス!!!」 ……灼熱の拳が炸裂し、スライムバグは一瞬で蒸発した。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加