3人が本棚に入れています
本棚に追加
……秋の空はただ青かった。
バグ消失から一時間あまり。
公園の外周にはすべて幕が張られ、内部は防衛省特別チームの縄張りとなった。
忙しく働くスタッフたちを尻目に、報告を終えた僕はぼんやりと空を眺めていた。
「お兄」
僕同様今は変身を解いた夕妃が、僕の傍らに立つ。
「今ママから連絡があってね……」
そこで言葉を切る。上を向いたままの僕を訝しんでいるのだろう。
「ひぃくん……泣いてるの?」
「まさか」
僕は即答した。
悲しいときに泣くには、僕の涙腺は鍛えられすぎている。
「それより、母さんなんだって?」
「ああ、今回は評価が高そうだから、前祝いで外食しましょうって」
「そうだなぁ……久しぶりにパーッとやるか」
「じゃ、決まりね」
滅多にない機会に、夕妃の声が少し弾んでいる。
「何にする?焼き肉?フレンチ?」
「お寿司がいいなぁ。ワサビが効いたやつ」
僕は答えた。
それなら、少しは涙も出るだろう。
ーー ENDーー
最初のコメントを投稿しよう!