プロローグ

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超スピードで駆け抜けながら、窓ガラスに映る自分の姿にため息を吐く。 金色の全身タイツに包まれた高校二年生、それが僕だ。 こういうのは遺伝で決まると言うが、妹の夕妃はシルバーを基調とした、クールでメタリックなイデタチだ。 僕が怪力とタフネスしか取り柄がないのに、『ラプンツェル』と名乗る彼女はテレパスとサイコキネシスを備え、長い髪をなびかせながら華麗に戦ったりする。 ニ○動なんかでも夕妃の人気は高く、一度動画がアップされるや瞬時に弾幕で画面が埋まる。 神様ってのは意地悪だ。 などと毎度の愚痴を呟く僕の耳に、悲鳴が届いた。 絹を切り裂くってやつ。授業中の女子生徒だろう。 現場に着くと、地獄絵図がそこにあった。 バグはすでに体育館の中に移動していた。 半狂乱で逃げ惑う生徒たち。床はすでに朱に染まり、生臭い臭いが充満していた。 そのバグは大きな目と長い舌を持ち、体表面は緑色で、二足歩行の人間大カメレオンといったところだ。 違うのは、大きく裂けた口から覗く鋭い牙の列。 そいつは伸縮自在の舌で獲物ーーこの場合は女子生徒だーーを捉え、少し遅い昼食を満喫しているらしかった。 大きく膨らんだ腹部、口の端には人の腕、その肘から先が引っかかっていた。
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