PART 1

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「あの虫みたいなカメラロボが、いっつもあたしらの周りをブンブン飛び回ってるんだから。こういうルーティーンこなさないと評価は上がんないよ?」 偉そうな夕妃の指摘に、母さんも同意する。 「監察官の戌亥さんも、夜のニュースに使える映像がないってぼやいてたわ」 「……あの人だって必殺技なかったじゃないか」 「でも狼男だよ?それだけでカッコいいじゃん」 と夕妃。あくまで僕の肩を持つ気はないらしい。 「現役時代のあの人は素敵だったわぁ……」 年甲斐もなく夢見る瞳の母さん。 「ワイルドで渋くて……お父さんと出会わなかったら、私……」 「おいおい、そいつは聞き捨てならないな」 はっはっは、と笑いながら、二階へと続く階段を親父が下りてきた。 いかにも昭和のヒーローでございといったその容貌は、ほぼフ○オカヒ○シで間違いない。 名は緋色豪士(ひいろ ごうじ)。 現役時代は真っ赤な全身タイツに身を包み、『バーニングマン』と呼ばれた親父は大股でダイニングを横切ると、暑苦しい顔を母さんに寄せ、 「アイツと結婚してたとでも言うのかい、マイハニー?」 などとクサいセリフを臆面もなく言い放った。 母さんは母さんで、イヤンイヤンと科を作りながら、 「だから、もしお父さんと出会わなかったらの話よぉ」 なんて言いつつ、Tシャツを盛り上げる親父の厚い胸板に指でのの字を書いてみたり。 そして視線を移せば、きれいなピンク色の舌を出し、僕にあかんべをする妹。 なんとスバラシイ家族団らんのひとときだろう。
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