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「あの虫みたいなカメラロボが、いっつもあたしらの周りをブンブン飛び回ってるんだから。こういうルーティーンこなさないと評価は上がんないよ?」
偉そうな夕妃の指摘に、母さんも同意する。
「監察官の戌亥さんも、夜のニュースに使える映像がないってぼやいてたわ」
「……あの人だって必殺技なかったじゃないか」
「でも狼男だよ?それだけでカッコいいじゃん」
と夕妃。あくまで僕の肩を持つ気はないらしい。
「現役時代のあの人は素敵だったわぁ……」
年甲斐もなく夢見る瞳の母さん。
「ワイルドで渋くて……お父さんと出会わなかったら、私……」
「おいおい、そいつは聞き捨てならないな」
はっはっは、と笑いながら、二階へと続く階段を親父が下りてきた。
いかにも昭和のヒーローでございといったその容貌は、ほぼフ○オカヒ○シで間違いない。
名は緋色豪士(ひいろ ごうじ)。
現役時代は真っ赤な全身タイツに身を包み、『バーニングマン』と呼ばれた親父は大股でダイニングを横切ると、暑苦しい顔を母さんに寄せ、
「アイツと結婚してたとでも言うのかい、マイハニー?」
などとクサいセリフを臆面もなく言い放った。
母さんは母さんで、イヤンイヤンと科を作りながら、
「だから、もしお父さんと出会わなかったらの話よぉ」
なんて言いつつ、Tシャツを盛り上げる親父の厚い胸板に指でのの字を書いてみたり。
そして視線を移せば、きれいなピンク色の舌を出し、僕にあかんべをする妹。
なんとスバラシイ家族団らんのひとときだろう。
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