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生徒達が皆、柔道場から出て行く中、正彦は帰らずに先生の前に正座した。
「正彦、どうした?」
正彦は真剣な面持ちで質問した。
「先生、一体合気とは何なのでしょう?」
「お前は何故、その様な事を尋ねるのか?」
「私はビデオで見てしまったのです。合気の術者は、相手の道着に触れる事も無く、襲い来る者達を悉く吹き飛ばしてしまったのです!」
先生は少し考えた後、正彦の前に胡座をかき面と向かって答えた。
「合気とは、究極の崩しである」
その答えに正彦は驚嘆した。未だ小学生ながらも正彦は柔道にこそ最強の崩しがあるのだと信じていたからである。
「まさか、では何故柔道には合気が無いのですか!? 合気は空手の様な殺人術には見えません」
「正彦、柔道は合気の技法を習得出来なかったのだ。創始者である嘉納先生でさへも」
習得出来なかった。この言葉に正彦は自分の世界の崩れる音を聞いた。
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