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 飛び出した正彦の向かったのは、藤公園だった。    正彦は以前、この場所で空手に勝っている。柔道こそが最強だと再確認した場所だった。    辺りは既に薄暗くなっている。子供達の姿は見えない。が、遠くに人影が見える。近付くと人影は義仁だった。義仁は独り、空手の型の稽古をしていた。   「義仁!」    正彦は泣きながら叫んだ。   「よう。あの時の勝負以来だな」    正彦は大泣きしながら道場での事を話した。頷きながら聞いていた義仁が語り出す。   「講道館柔道がオリンピック種目となり、世界ルールが制定され、現在、世界でも柔道家の数は空手家の数の非ではない。しかし柔術は一向に消える気配はない。何故か? それは大東流の存在があるからだ。    大東流が他の柔術も講道館より優れているという印象を持たせている。    お前は合気が驚異だと思っている様だがそれは違う。何故なら合気を使える者は殆ど居ないからだ。    真に驚異なのは大東流の柔術である。大東流の投げの間合いは、当て身の間合い。つまり、柔道が組む前のタイミングで既に投げの間合いに入られていると言う事だ。    西郷四郎の強さはそこにある」
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