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「よいか正彦。柔道は国民の体育。ラジオ体操の様に皆の健康を願って作られた。柔道を喧嘩に使うのは、野球選手が金属バットで生身の人間を撲るのと同じ事なのだよ」
「それこそが護身であり武道です。僕は空手に対抗出来る技を身につけたいのです」
正彦は折れない。先生は少し考えた後、立ち上がり正彦も立たせた。
「歯を食いしばれ。腹に力を入れろ」
正彦は言われた通り、全身に力を入れた。先生は正彦の腹に右の拳を沿え、良いか? と一言聞くと、右足を前進させながら軽く突きを打った。
軽い突きながら正彦は、ウッ! ともがいた後、後退し膝から崩れ落ち、畳に嘔吐した。
「これが殺法、空手の術だ。柔の動きに剛も兼ね備え、単純な攻撃であり最も有効な崩しである。そして……」
話の途中で完全に崩された正彦の体の奥衿と袖を掴み、払い腰で畳にたたき付ける。そして話を続けた。
「そして、柔道の禁じ手である」
「恐るべし、空手の術……」
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