スポ根

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 正彦は自分の家の庭で独り、正拳突きの練習をしていた。    すると後方から、正彦を呼ぶ声が聞こえてくる。振り向くとそこには先生が立っていた。正彦は咄嗟に逃げようとしたが、すぐに捕まってしまった。   「正彦、突いてみろ」    先生の言葉は意外だった。正彦は少し戸惑った後、右に構え、思い切り突きを打った。    先生はそれを右側に裁くと同時に袖を掴み、正彦の体を崩す。   「掴みは手を封じる事が出来る」    崩れた体を立て直そうとする正彦だったが、既に左の袖も取られていた。   「袖釣りは両の手を封じる事が出来る」    先生は語りかけるというよりは独り言に近い口調で喋っていた。   「空手の術者は構えを使い自らの肉体を鋼と化す。すなわち、当て身は効かぬ。が、構えを崩したならば鋼は解ける。柔の術にて後の先を取るのだ」    ふわりと浮く正彦の体が、優しくアスファルトの地面に落ちた。    先生は正彦を振り返りもせず、その場から去って行った。
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