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あれから二週間が経った。正彦の謹慎は続いている。
学校での休み時間、正彦は同級生の洋介が正拳突きを披露しているのに気付いた。話を聞くと、最近、空手の級が上がったとの事だった。
「空手なんかより柔道の方が強い! 勝負しろ!」
正彦は苛々していた為に最初から喧嘩腰だった。周りの男子達は異種格闘の始まりだと喜び机を脇に寄せリングを作る。喧嘩を売られた洋介も戦闘体勢を取っている。その顔は自信に満ち溢れていた。
「柔道家なんて正当防衛の適応する時しか戦えないクソ野郎ばかりだと思ってたぜ。お前のその心意気だけは誉めてやる」
「柔道の強さを思い知れ!」
正彦は素早く潜り込み洋介の突きを繰り出す前に大内で崩し、体落としで思い切り床にたたき付けた。
周りから歓声が上がる。腰を強打した洋介は既に戦意喪失していた。
「空手の術、恐るに足らず」
やっと起き上がった洋介は悔しがりながらも反撃する意思は無い。
「お前なんか、道場の義仁にかかれば手も足も出ない」
完全な負け惜しみだった。正彦は洋介を再び床にたたき付け、片羽絞めにした。もがき苦しむ洋介。正彦は耳元で囁いた。
「その義仁に伝えろ。今日の十七時、三丁目の藤公園に一人で来いと」
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