名医ベスト5

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結平紀章[けっぺい きしょう]。 彼はここ、聖クロウズ総合病院の脳外科医を受け持つ院内でも有名な名医ベスト5の一人。 さらりとした黒髪に銀縁の知的眼鏡が印象的な、美形に分類される男だ。 しかし難点は潔癖症で女嫌い。嫌いとは言うが、彼の場合は恐怖症にも近い。 女性が自分の半径数メートル圏内に入ろうものなら顔が病的に青褪める。 患者に関しては仕方がないと腹をくくっているのか、これは患者だ、これは患者という名のただの人間だ、そうこれは仕事なのだから仕方がないのだ!!と、自分に暗示をかけ身体中に湧き出んばかりの汗と蒼白顔を何とか抑えている。 一応、彼も人前ではちゃんと堪えているのだ。 日頃は沈着冷静のクールキャラを演じているつもりだ。 しかし、噂が噂を呼び、彼の女嫌いネタは今では院内中に露見されている。そのため担当看護婦達は極力カーテンよりも中には入らないように気をつけているという。 潔癖症の方は、いつも綺麗に整えられた診察室や常に汚れはもとい皺一つない新品のような白衣等、多方面でその症例が発揮されている。 一癖あるイケメン医師。 いやぶっちゃけ一癖どころか二癖も三癖もあるのだが、このご時世、女子からすればそれすらも一つのステータスなのか、他医科の看護婦の間では密かに人気票をいただいている。 しかし。 「結平先生…また独り言ですね。それもまた今日のは一段と豪快な」 「仕方ないわよ…変わった人だから」 「残念な人ですね・・・」 「本当に・・・」 担当看護婦達からは、そうやって日々溜め息が絶えない。 変わり者なのだ、仕方がない。変わり者だから、常人には見えないモノだって見えてしまうのか……
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