名医ベスト5

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「え?そりゃお前…ハイエニストだよ」 巨大な病院内の、綺麗に造られた緑溢れる庭園。 きょとんとした顔で、至極当然のように男が言い放った。 それは結平よりもだいぶ体格の良い短髪の男。左胸の名札には『王』と書かれている。 「…は?」 「は?じゃなく、ハイエニスト」 「二度言わなくとも聞こえてる!!」 短い黒髪を適当にわさわさと立たせた無造作な頭。顎には無精髭。だらしなく前を開け放した白衣、さらに腕捲り。首元のあいた黒いTシャツ一枚のインナー。五本指ソックスに万年サンダル… ストレートでサラッサラの髪にきっちりと全ボタンの締められた白衣と真っ白なワイシャツ、ネクタイにももちろん乱れはなくしっかりと体型にフィットしたズボンに真面目な革靴を履いている結平とは、まるで正反対の男だ。 気持ちが良いくらい真逆の男達が、庭園内を一緒に歩いている。 「お前みたいな単細胞に聞いた俺が馬鹿だった」 三度の飯の如く、一日三回は必ずあがる『単細胞』という単語。結平が彼に対して言うお決まりの言葉だった。 王填希[のう てんき]。 彼もまた、これでも一応ベスト5の一人。単細胞だなんだと言われようが名医の一人なのだ。 所属は整形外科で、彼に手術を任せれば百発百中間違い無し、気さくでいつも元気な笑顔に誰もが安心するという医者の鑑だ。 …しかし。 外見はぶっちゃけだらしなく、手術にまで発展しない限り大体の診察はアバウトに軽いノリで済ませる男だ。 『指の骨折?んなもんテープはっときゃ治るよ!』 なんて簡単な台詞は彼のお決まりだった。 「でもよぉ…ハイエニストって」 いつもきっちり仕事をこなす完璧主義の結平からすれば最悪の仕事ぶりこの上ない。 だがこの二人、実は幼馴染み。同じ地方の出身で、幼稚園から大学、はたまた勤め先まで被ってしまった最強の腐れ縁だった。
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