It’s no use crying over spilt milk

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「ふざけんな別れる」 突然聞こえたハッキリとした声に、心臓が跳ねた。 だがこの声、どこかで聞いたことのある声だ。 なんだ、幽霊じゃなかったのか。幽霊が「別れる」なんて言うはずが無い。 安堵したのも束の間、つい好奇心が先走ってしまい意を決して本棚の隅を覗いてみると、Yシャツをはだけさせた高木が会話している相手を睨んでいた。 (あっある意味幽霊より恐ろしい男…) 「考え直してよ。俺もう英也じゃないと勃たないんだよ」 「俺」…?「勃たない」…? 聞き捨てならないワードにいまいち思考回路が上手く回らないが、とりあえず会話が異常で、学校の図書室で話すことではないことはわかる。 間宮が言っていたあの噂は事実だったのだろか。 「マジしつこ。最初に言ったじゃん、もう飽きたんだよアンタに。だからもう俺たち終わりなの」 「…チッ、こっちが下手に出てると思っていい気になりやがって。今すぐここで犯したっていいんだぜ?」 「っ、やめ」 (おいおいおいおい) 急に相手の態度が豹変し、唐突な険悪なムードに思わず吹き出しそうになる。(元々ムードは宜しくは無い) 読んでいる本でもしこんな展開になったとしたら、即刻読むのを中断であろう急展開である。 ていうか図書室で何してんだよ!と心の中で突っ込んでる間にも、高木は抵抗するも小柄な奴は体格差のある先輩にいとも簡単に身体を拘束され、すっかり絶体絶命の危機に晒されてしまっている。 高木のいつもの無表情ではなく、見たことがないくらい狼狽え、羞恥心と焦りで赤く染まった表情は何故か悲惨に見えた。まるで蛇に睨まれた蛙だ。 絶対に関わればろくな事が起きない、できれば関わりたくないと思っていたのに、気付けば何も考えずに揉み合う2人の前に飛び出してしまっていた。 「や、やめろ!この神聖な図書室でそんな、は、破廉恥なことをするのは!」 (やべえ声裏返った) 「…!芳原、」 「ぐはぁあ!」 俺が思っていたのと違う。確かに声が裏返ったことは予想外過ぎたけど、俺は正義のヒーローっぽく助けようと思ったのに、高木は俺が出てきたことで隙ができた先輩に、不意打ちで先輩の大事なトコロに容赦なく蹴りを入れたのだ。 すると案の定先輩は悲鳴に近い雄叫びを上げながらその場に倒れ、高木は何の躊躇いもなくその悶える背中を踏みつける。
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