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関わらないと決意したものの、とんでもないものを見てしまった気がして気付くとぼんやりとずっとそのことばかり考えてしまう自分が心底キモチワルイ。
せっかく机の中に眠っていた小説を持ち帰ったというのに全く持って集中できない。
おかげで君の腎臓をたべたいを借りることは断念しざるを得なかったのだが。
顔の可愛い子は性格が悪いとよく聞くが、それは女子に限らず男でも該当するのだろうか。
そもそも男でも可愛いって概念がもはや間違っているのではないか。男に可愛いなんて思う方が御門違いなのか。
「あ゛ーーもう、わっかんねぇ」
「うるさいよ芳原くん、静かにして。いまワンコ攻めのアンソロ見てるんだから」
「?いぬ?…うん、ごめんワン」
本子さんがまた俺のわからない日本語をペラペラ喋っているが、これに軽率に突っ込んでしまうと軽く2時間ぐらいは語られて面倒くさいことになるから、適当に流しておくことにする。
「あ゛~~~もうっ」
ぐしゃぐしゃと髪を掻き毟ると再び、踏まれて喜んでいる先輩を心底嬉しそうに見下ろす高木の顔がフラッシュバックする。
やっぱりもう関わりたくない。
*
結局図書室の一件のせいで、一睡もできなかった。そしてあんなことを見てしまった後だし、高木と顔を合わせづらい。教室に向かう足取りが重すぎる。
堪えきれず溢れた欠伸を噛み閉めていると、尾てい骨辺りに衝撃が走った。これ折れた?折れた?
「間抜けな顔して突っ立ってんじゃねーよ、邪魔」
天使の顔をした悪魔、否、天使の顔をした変態、高木だ。誰が原因で間抜けな顔をしていると思っているのか。と睨んでみるものの、「あぁ?文句あんのかよ」と睨み返されると見事に気迫負けした。
「あの…昨日の」
「誰かに言ったらぶっ殺す」
「…い、言わないってば…」
自分から積極的に誰かに口外するつもりは毛頭なかったが、間宮曰く噂になっているらしいし、だとすれば皆知っていると思うのだけど、所詮噂事だと思っているならわざわざ言い広める必要も無い。
なんていうか、本人はその事を知っているのだろうか。
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