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「意外だもん」 生徒会とか、部長とか、そういうのばかり務めていた真面目な惺ちゃんが宿題やらないとか意外過ぎる。 「そう?」 「先生に怒られたりしないの?」 ふとした疑問を口にすると、惺ちゃんは笑った。 「怒られるわけないじゃん。ちゃんと提出はするんだから」 「......へ?」 惺ちゃんの言葉の意味が解らなくて、変な声が出ちゃった。 「これでも真面目な惺悟くんで通ってたんだから、ちゃんと提出はするよ」 「じゃあ、一体いつやって......?」 「ん?当然、学校に行ってからに決まってるデショ」 当たり前ーとでも言いたそうな惺ちゃんの顔。 「学校に行ってからやって間に合うの?」 そう尋ねると、惺ちゃんは右手の人差し指で自分の頭をツンツンと指差した。 「意外にここだけはいいもんでー」 「惺悟くんは頭も良いし、器用よねぇ」 話を聞いていたらしいお母さんも話に加わってきた。 「両親には感謝してます」 お母さんの言葉を否定もせず、惺ちゃんはニコニコしている。 「......ふーん」 「あ、何その反応は?もう少し他の反応とかないわけ?」 私の薄い反応が不満なのか、惺ちゃんは私が解いているプリントを指先で揺らした。 「あっ!ちょっと惺ちゃん、何するの!?」 「解らないのドコ?」 「え?」 「せっかくだから、解らないところ教えてあげるよ」 「あら、良かったじゃないの」 キッチンからお母さんの呑気な声が聞こえてきたけど、それに反応出来なかった。 真横で見た惺ちゃんの優しい笑顔に引き込まれて、一瞬時が止まったのかと思っていたから......。  
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