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「何、寂しいの?」
「......」
だから、どうしてそう痛いところばかりを突くのか。
長く一緒にいた分だけ、単純な私の思考回路などお見通しなのかも知れない。
「あ、でも」
何かを思い出したかのように惺ちゃんが声を発した。
「でも?」
「うちの両親がいつ帰ってくるんだか......ソレ次第では明日帰ろうかなー」
「明日!?」
明日くらいは遊べるかな、とか考えていた私は惺ちゃんの発言に驚きを隠せなかった。
「まさか連日泊まるらせてもらうわけにもいかないし。
オレ、今回携帯を持ってくるの忘れて両親と連絡も取れないんだよね」
惺ちゃんは、少し困ったような顔をした。
「それなら大丈夫。
二泊三日して14日には帰ってくるって話されてたから」
「本当ですか?」
「だから明日のお夕食は皆で食べましょうね」
そう言うと、お母さんは明日は何にしようかしらと言いながらリビングを出ていってしまった。
「良かった、まだ帰りたくなかったんだよな......」
二人きりの静かなリビングに吐息と共に漏らした惺ちゃんの呟きは広がって消え、その余韻は私の中に残った。
気にはなったけど、何となく聞いてはいけない気がして、私は聞こえない振りをした。
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