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わたしはと言えば、親たちの飲み会に付き合うのも飽きていたから、リビングから自室に向かった。 夏とはいえ、日が暮れると気温は下がり涼しくなる。 開けっぱなしだった窓を締めようと近づくと、窓の外に人影が見えた。 柵に寄りかかって煙草を吸う惺ちゃんの姿があった。 薄明かりに照らされてるだけの惺ちゃんの顔はハッキリとは見えないはずなのに、何故だか泣いている気がした。 ふと脳裏に先程のママたちの会話が浮かんだ。 振られたかも知れない惺ちゃん。 泣いているように感じた惺ちゃん。 友達のように好きな子さえいない自分には恋愛なんてものがどんなものであるかも分からない。 だけど、好きな子のことを話す友達の幸せそうな顔を見ているからこそ、反対のことも分かる気がした。 わたしは居ても立ってもいられなくなり、急いで階段を駆け降りた。 勢いづいて玄関の段差に転びそうになるのを堪えて、慌ててサンダルを履いて玄関の扉を開いた。  
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