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朝5時。
「ハァ……ハァ……」
自転車で町中を駆け回る僕の名前は【真藤幸喜(シンドウコウキ)】。
今は新聞配達に精を出している。
朝の配達は毎日の日課と言うか、僕の大事な収入源だ。
これを欠かすと家賃が払えず、すぐに家を追い出されるだろう。
配達を終え、配達所に挨拶をして家に帰る。
歩くこと5分、木造の今にも崩れそうなボロアパートが目に入る。
これが僕の自宅。
「ただいま」
と言っても返事はない。
両親は僕が中学1年の時に事故で亡くし、1人だけいる弟も当時お互いに別の親戚に引き取られ、それ以降会っていない。
僕を引き取ってくれたのは、父さんの兄である叔父夫婦だ。
親を亡くした僕を気遣ってか、とても親切にしてくれた。
でも逆にその優しさが辛く、中学卒業後から近所の高校に通う事を条件に一人暮らしを始めた。
僕の希望で家賃や生活費は自分で負担していて、学費も自己負担したかったのだが、どうしてもと叔父が支払ってくれている。
まあ、家賃も毎月ギリギリだから助かるのだが。
帰って来た僕は朝メシを食パンで済ませ、学校への身仕度を始める。
鏡を見て髪型を整える。
新聞配達で風に当たってボサついた黒い髪を少し挫で梳かし、前髪が目にかかるようにする。
学校では素顔を見せたく無いのだ。
その理由は後々分かるだろう。
そして僕は全ての支度を終え、行きたくもない学校へと向かうのだ。
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