第四十三章 最期の戦い

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「救え……か。俺より強い女を救えってよ」 「ばーか、女に強いも弱いもねえよ」 目の前に積もった砂の山を見つめながら、そう零したウォレットにレヴィリアはそう返した。 「要はヴァルキリーが助けを求め、お前がそれを受け入れるかどうかって話だろ?」 「君はいいのかい?俺を狙うライバルが増えるんだぜ?」 「馬鹿かお前はよ。それに……どうせサーシャの一人勝ちだろうがよ」 ふて腐れたように、足元の小石をコツンと蹴る。 ゆらゆらと揺れる尻尾がその心情を表しているようにも見える。 もう隠す必要もないだろうが……いや、今更言う必要もないだろうが、レヴィリアはウォレットに惚れている。 もう本人も完全に認めているレベルでだ。 しかし、彼女は諦めている。 どうせウォレットが選ぶのはサーシャだ。 そしてそれは、レヴィリア自身もお似合いなカップルだと認めている。 ダークホースでフィリがいるが、フィリはよくて愛人止まりだろうと失礼な事も考えている。 「んじゃ、感傷になんか浸ってねえで、アタシ達も行__________」 そうして、レヴィリアはアマンダ達の後を追おうとした。 しかし、それはウォレットによって阻まれた。 壁に空いた穴から飛び降りようとしたレヴィリアの腕を掴んだのだ。 「は…?おい、何し__________」 一体何の用があるのだと、振り返るレヴィリアを抱き寄せ、ウォレットはその唇を奪った。 一瞬、時が止まったような気がした。 あまりに突然の出来事に、レヴィリアは無抵抗に、ただその大きな目をパチクリと、丸く広げて固まっている。 実際には十秒程度。 しかし、レヴィリアにはそれは何時間にも感じられた。 それ程までに長く感じた。 「__________ん……」 やがて、離れる両者の唇。 舌を入れたわけでもない、フレンチなキス。 しかし、レヴィリアは腰が抜けたようにカクンと膝を折り、ウォレットに身を預けた。 「てめ、これは………浮気ってのになるんじゃねえのか?」 「残念。まだ俺はフリーだからな。浮気にゃならんさ」 そっと、レヴィリアの細腰を抱き寄せるウォレット。 レヴィリアに抵抗はない。 「んで、おかえり【キャット・レディ】」 「………おうよ」 いつの間にか、レヴィリアの髪は黒くなっていた。 猫耳も尻尾もなく、紛れも無い人間へと戻っていた。
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