第一章 悪鬼羅刹の猫娘

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そうして時刻は二十一時半。 レヴィリアは自宅であるボロアパートの一室にいた。 小さめの肩掛けリュックを玄関の横に起き、自身は茶色の短パンに黒のタンクトップ、赤い革製のジャケットを羽織り、募る苛立ちをタバコを吹かす事で抑えている。 しかし、どうやらその苛立ちが収まる前までに、多大な犠牲を払ったらしい。 今、レヴィリアのいる【グランドヒルズ】と言う国の遠い北に位置する【クインズバレー共和国】の大人気キャラクターである【等身大ヨーデル西郷三世人形】が見るに耐えない悲惨な状況になっている。 ちなみに、レヴィリアの住むこの街の名は【バージニアルシティ】 グランドヒルズ国の首都にして世界で最も犯罪発生率と年間死傷者数の多い街だ。 しかし、その反面世界中から犯罪者が集まるが故に、物品から情報までこの街で手に入らないものはないとまで言われている。 「よ~レヴィリア~。待たせたね~」 「おっせえんだよボケ!何してたんだよ!」 そうしてレヴィリアが再び暴れようと首の取れ掛かっている西郷人形にナイフを突き立てようと立ち上がった時、不意に玄関の扉が開き、白のタイトスカートにピンクのトレーナーを着た金髪ショートカットの女性が姿を現した。 その女性はレヴィリアが昼間に死闘を繰り広げた犯罪組織【ブルース】に所属している殺し屋【アマンダ・スカートレット】二十一歳、彼氏募集中。 「はいはい待たせて悪かったよ。でも、これから私達は追われる身だ。逃亡生活をするんなら、ちゃんとした準備は必要だろ?」 アマンダはそう言うとレヴィリアの手を引き、玄関の外に用意したものを見せる。 「………馬車?」 「ビンゴぅ!馬鹿なアンタでも馬車くらいは知ってたみたいだね」 「殺すぞアバズレ女が」 「バーカ、私はアンタみたいにウブじゃないだけさ。てか話を戻すよ?私達は文字通り【逃げる】んだ。国外にね。でも、向こうだって当然追っ手を出してくる。そして、その追っ手を振り切る為には【大量の荷物を運べる十分な機動力】がいる」 「………その為の馬車か」 「そゆこと。いちいち追っ手を相手にしてたら、私達の向かう先がバレちまうしね」
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